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ケン、ではなくヤマちゃんこと和が旅立ってしまいました。
1月24日、享年約30歳。
白いおじいちゃんコンビとしてケンとつかず離れずの不思議な関係を築いてくれていたヤマちゃん、まるでケンの身代わりになってくれたかのようなタイミングでした。
ケンの調子が悪いとお伝えしたのが20日。
翌日の21日、放牧から戻る際にヤマちゃんは転んでしまいました。
時間はかかったものの、なんとか立ち上がり、どうか何事もなく復活してほしいと願っておりました。
22日は少し元気はないものの、通常通り放牧、普通の一日を過ごしました。
そして23日。放牧から戻しに向かうと、馬場に横たわっているヤマちゃんがいたそうです。
普段から寝るのが大好きだったヤマちゃん。馬房はもちろん、放牧場でも他の馬の視線も気にすることなく、豪快によく寝ていました。
20日に転んでしまって以来、寝転がるのを我慢していたようなのですが、どうしても我慢しきれなくなったのか、もしかしたら体が痛くなったのか、はたまたまた転んでしまったのか、真相はわかりません。とにかくそこに起き上がれなくなったヤマちゃんがいたのだそうです。
経歴詐称疑惑のあるヤマちゃん、表向きは27歳程度としていましたが、オーナーさん曰く、30歳を超えている可能性は十分にある、むしろ超えているだろうとのこと。
心身ともに何か辛いものがあるのか、必死に起き上がらせようとしても、どうも本人にその気がないような状態で、一向に立ち上がることができません。
ヤマちゃんのオーナーさんはかなり多忙な作家さん。仙台在住なのですが、運悪くこの日は東京で撮影とのことで、すぐには駆けつけられないとのこと。それでも予定を繰り上げて急いで来てくれるとのことで、とにかくオーナーさんに会うまでは頑張っていてほしい、その一心でした。
夜7時過ぎ、オーナーさん到着。極寒の中、立ち上がれないものの、人参や乾草を食べるなど、意識もはっきりとしていたヤマちゃん。無事にオーナーさんには会えたものの、みんな何もしてあげることができない悔しさと切なさでやりきれない気持ちでいました。
オーナーさんも覚悟を決め、自然の流れに任せようと、仙台に引き返していきました。
私たちも、何もしてあげられない中、「ともかくオーナーさんが最後の別れをすることができた」と、‘仕方がないんだ’ということを自分たちに言い聞かせるように一晩を過ごしました。
翌朝。旦那が一言「見に行きたくないな」と呟いてヤマちゃんの元へ。
死んでいたとしても辛い、万が一生きていたとしても辛い。
いつもいつも、そうです。これが本当に素直な気持ちです。
そして、万が一の結果でした。
極寒で、かつ雪が降り積もる中、ヤマちゃんは雪を食べながら一晩を越していました。
‘いたたまれない’という言葉はこのためにあるのではないかと思うほど、本当にもう、苦しさでしかありません。
「生きている」ということを喜べないって、これほど悲しいことはありません。
誰もが「生きてたか…」というため息でした。
オリやシュルの時と同様、死ぬことの難しさをまたも痛感しました。
自然の力に任せることの‘いたたまれなさ’。
獣医さんに最期は任せることにしていたオーナーさんの意思で、獣医さんが到着。
しかし、獣医さんの口から出たのは驚きの提案でした。
「強心剤を打てば、立ち上がることができる可能性もある」
正直、獣医さんも「可能性がある」とは言いつつ、その可能性はほぼないに等しいと思いつつ、まだ意識のあるヤマちゃんを見て、こちらはこちらで、ヤマちゃんと、オーナーさんへの‘いたたまれなさ’で提案してくれたのだと思います。
昨晩、覚悟を決めて帰っていったオーナーさんにそのことをお伝えして良いものか、若干の迷いはありつつ、思い切って電話。すると返ってきたのは少しの迷いもない「お願いします、僕たちももう一度向かいます」という力強い返事でした。
そこから一転してヤマちゃん蘇生プロジェクトが動き出します。
獣医さんからの指示で、強心剤を打っても、寒さでどんどん体力が消耗していっては意味がないから、とにかく温められる環境を、と、ブルーシートでテントを組むことに。
「工業用のヒーターとかがあれば良いんだけどなぁ…」と獣医さんが呟いた直後に、オーナーさんから「何か必要なものはありますか」という電話。
ダメ元で工業用のヒーターの件を伝えると、調達しながら向かってくれるとのこと。
その間に必死で家中の使えそうなものをかき集め、簡易テントを立て、とりあえず家庭用のファンヒーターで微々たる温風を送り始めました。
この時には昨晩から今朝にかけての‘いたたまれない’という気持ちは消え、何かこうワクワクにも似たような気持ちが芽生えていました。
「できることがある」
たぶん、誰もが立ち上がるとは思っていませんでした。それでも、何もできずにいるよりも、ずっとずっと気持ちが上がり、ヤマちゃんにも積極的に声をかけてあげられるようになったのです。
不思議な感情でした。
無理だろうとわかっていることに、これほどまで必死になれるって、今となれば本当に不思議です。だけどあの時は、「奇跡を信じて」とか、そういう気持ちでもなく、やはり何かワクワクに近い感情でした。
そしてオーナーさんが到着。
そこには奇跡的に調達できたという工業用ヒーターが!
強心剤が効いてきたことと、工業用ヒーターで体が温まってきたこと、何よりオーナーさんとの再会で、ヤマちゃんも昨日よりずっと肢を動かし、とても一晩極寒の中を過ごしたとは思えない状態でした。
暖かくなったテントの中で、大好きな黒糖を食べさせながら、ヤマちゃんとの思い出話に花を咲かせるオーナーさんご夫妻。昨晩とは180度違う光景でした。
不謹慎かもしれませんが、幸せな光景にも見えました。
そうして強心剤を打って5時間程経ったでしょうか。
立つことは叶いませんでしたが、納得するまでヤマちゃんとの最期の時間を過ごし、お別れを決めたオーナーさん。最後にヤマちゃんにかけた一言は「元気でね」でした。
実はヤマちゃんは私たち夫婦にとって初めての預託馬であり、つまりこのオーナーさん夫婦も私たちにとっては初めてのお客様でした。
代がかわり、それに伴って牧場の運営に関しても見直しをしました。
預託料をあげ、HP等も充実させ、牧場そのものの価値を上げたいと思っていました。
ですが、新しいオーナーさんとはなかなか出会えず、問い合わせはあっても、預託にまではつながらないというケースが続き、やはり預託料が高すぎるのかと悩み続けていました。
そんな時に出会ったのがヤマちゃんのオーナーさん夫婦でした。
預託先は預託料うんぬんで決めるのではなく、その牧場と「合う」かどうかだ、と言い、そしてこの土地や私たち家族を「合う」と判断し、預託料への何のためらいもなく預託を決めてくれました。
この時は本当に涙が出るほど嬉しかった…。自分たちの方針も間違いではなかったのだと、認められたような気持ちでした。
そして不思議なことに、この出会いの後から、預託につながる出会いや話が続きました。
オーナーさん夫婦は作家さんというだけあって、いらっしゃる度に、私たちの知らない世界の話をたくさん聞かせてくれ、お会いできるのがいつも楽しみでした。
何より、本当に飾らない、自然体で無邪気なお二人だったので、この土地そのものを満喫してくださり、ヤマちゃんだけでなく、他の馬たちのことも可愛がってくださり、大好きな2人でした。
そんなお2人の新しい作品のタイトルは「命と魂の長いお話」。
さらに驚くべきことに、この本の発売日はヤマちゃんが倒れたちょうどその日だったのです。
最初は「何て皮肉な…」と思いましたが、この本を読ませていただいた後に感じたのは「あぁ、これは偶然ではなく必然だったんだ」ということでした。
ヤマちゃんはきっと、一つの大きな使命を果たして、そしてオーナーさん夫婦が次のステップに進んでいくために、旅立っていったんだな、と。
ヤマちゃんの周りには、いつも不思議なことがあふれていました。
今回も、本当に不思議なことや奇跡的なことがたくさんありました。
(実は私もケータイをあの夜に紛失し、未だに行方不明)
そしてそれらはいろんなことを考えさせてくれ、たくさんの学びをくれました。
今回の最期を迎えるにあたり、正直、私たちの知識不足、判断ミスだと思われる場面は少なくありませんでした。そこに対しては申し訳なさと後悔が多々あります。
ですが、オーナーさん夫婦はそれを責めることはなく、むしろ「最期がここで本当に良かった」と何度も何度も口にしてくれたのです。
本当に嬉しくて、報われる思いで、そして責められる以上に「絶対にこの経験を無駄にしない」という思いがわいてきます。
旦那が言っていました。「今回は不思議と喪失感のようなものが少ない」と。
自己満足かもしれませんが、最後の最後にやれる限りのことをやってあげられたこと、オーナーさんとヤマちゃんがしっかりとお別れをすることができたこと、それらが起因しているのでしょう。
だけどこれも偶然ではなく、きっとヤマちゃんやオーナーさんたち夫婦のパワーなんだと思います。
うまく言えないですが、ヤマちゃん、そしてヤマちゃんオーナーさんとの出会いと、今回の最期までの流れを経て、今回の本を読んで、いろんなことが腑に落ちました。
ヤマちゃん、ありがとう。
タカさん、ワカさん、ありがとうございました。
大好きです。
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